ほんとうの友だちを「友だち幻想」に学ぶ

ライフ・キャリア

菅野仁さんは、研究されているジンメルのお話を、穏やかな語り口でうかがったことが思い出されます。

「友だち幻想」(ちくまプリマー新書)はベストセラーになりました。若い人はとくに友だちの有無はなの重要でしょう。

個人的に、友だちがないという強迫概念は、ますます強まっているように思えます。

友だちとは「他者」であり、価値観が100%共有されることはない。共有できるとした、それは自分の〈分身〉だとおっしゃっています。

過剰な期待を持つのはやめて、人はどんなに親しくなっても他者なんだということを意識したうえでの信頼感のようなものを作っていかなくてはならないのです。(P128)

そして、関係が深まらない「コミュニケーション阻害語」を使うことを戒めます。

「ムカツク」「うざい」「ていうか」「チョー」「カワイイ」「ヤバイ」「キャラがかぶる」「KY」があげられている。これら阻害語を使うことによって、情緒の感度が知らず知らずのうちにすごく浅いものになってしまうと言われています。

その一方で思い出すのが、ニッポン放送のアナウンサーで「コミュニケーションの達人」と言われる吉田尚記さん。もともとはコミュ障だったという吉田さんの著書「なぜ、この人と話をすると楽になるのか」によると、立ち寄ったファストフード店での女子高生の友だちグループが、「ムカツク」「うざい」「ていうか」「チョー」「カワイイ」「ヤバイ」等だけで会話するのを聞いて、「これコミュニケーションの極意だ」と気づいたそうです。

ここには「友だち」も「コミュニケーション」という言葉の多義性を感じます。

ぼくは菅野さんのいう「友だち」がいてほしいけど、きっと吉田さんのいう「コミュニケーション」が実践的なんだろうなあと思ってしまいます。

いくつになっても、「友だち」と「コミュニケーション」は、むずかしいですね。

でも、菅野さんの言葉は信じたい。

友だち幻想からなんとか距離を取り、リアルな現実の中で他者とつながりながら、じっくり深い〈生のあじわい〉を築いてゆきたいという思いが、私にはあるのです。(P154)

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